笑って簪を渡した。
と、碩寿翁は苦笑をしたが、
「どうやら依然としてあの老人は、贋物を売っておりますようで。……この宝玉は硝子《ガラス》のかけら[#「かけら」に傍点]で」
「さようさよう硝子のかけら[#「かけら」に傍点]だ」
で、二人は哄笑した。
これで刑部という老人が、例の屋敷で勿体らしく、贋物の古物や異国産の品を、売っているということが読者諸君にも、諒解されたことと思う。
これで書くことはないはずである。
では大団円とすることにしよう。
が、しかし一言云いたいことがある。
それは茅野雄の心持のことで、彼はこのように思っていた。
「千賀子という巫女《みこ》が俺を占い、『山岳へおいでなさいまし、何か得られるでございましょう』と、こんなようにあの晩云ってくれたが、その何かは浪江のことだった。……あの晩以来生死の境いを、卍巴と駈け巡ったが、しかし浪江を手に入れたのだから、無駄であったとは云われない」
底本:「国枝史郎伝奇全集 巻四」未知谷
1993(平成5)年5月20日初版発行
初出:「雄弁」
1928(昭和3)年9月〜1929(昭和4)年8月連載
※「露路」と「露地」の混在は底本通りにしました。
入力:阿和泉拓
校正:門田裕志、小林繁雄
2005年1月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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