は、お蝶の家へ忍んで行った。そのうち自分もいつとはなしに、お蝶に恋をするようになった。
「妾はあの夜お逢いしました時から、あなた様を愛しておりました」
「私もそうなのでございます」
とうとう互いに打ち明け合った。そうやって親しみを重ねて行くうちに、お蝶という女が覇気に富んでいて、京一郎と連れ立って、遠方へでも走って行ってしまおうと、心巧みをしているような、口吻《こうふん》を洩らすようなことがあった。しまいには露骨に勧めるようになった。
「若い時期《とき》は早く過ぎて行くものです。享楽しようではありませんか。妾はいつでもお供をします。あなたには早く決心なされて、陰気な、無気力な、生き甲斐のない、ご両親の家などお出なさいまし。外にはもっと華々しい、活気に充ちた生活があります。そうして男というものは、何か事業《しごと》をしないことには、男としての真の楽しみを、感じないものでございます。外にはいくらでも事業があります」
などというような意味のことを、率直に云ってそそのかしたりした。
五
京一郎は性格として、活動的の人間であって、箱入り息子式に生活させられることを、ひそ
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