」と貝十郎はまたも云って、お島の先に立って進んで行った。

        三

 その建物の内へはいり、座敷の様子を眺めた時、お島は異人館へ来たのかと思った。
 瓔珞《ようらく》を垂らした切子《きりこ》形の、ギヤマン細工の釣り灯籠《どうろう》が、一基天井から釣り下げられていたが、それの光に照らされながら、いろいろの器具、さまざまの織物、多種多様の道具類、ないしは珍らしい地図や模型、または金文字を表紙や背革へ、打ち出したところの沢山の書籍、かと思うと色の着いた石や金属、かと思うと気味の悪い人間の骸骨《がいこつ》、そう云ったものが整然と、座敷の四方に並べられてあり、壁には絵入りの額がかけてあり、柱には円錐形の鳥籠があって、人工で作ったそれのような、絢爛《けんらん》たる鳥が入れてあるからである。
 そうしてそれらの一切の物へは、いちいち札がつけてあった。硝子《ガラス》細工らしい長方形の器具が、天鵞絨《ビロード》のサックへ入れてあったが、それへ附けられた札の面には、テルモメートルと書かれてあり、四尺四方もあるらしい、黒塗りの箱の一所から、筒のようなものがはみ出しており、その先にレンズの嵌まっ
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