うわ[#「うわ」に傍点]言のように云いながら、お篠の方は先へ進んだ。やがて三人は主屋《おもや》を抜け、ギヤマン室をつないでいる、長い廻廊へ現われた。やがて三人は見えなくなった。
 ギヤマン室へはいったのである。

        十三

「小糸氏さあさあ遠慮はいらない、ここでゆっくりお品殿と、ままごと[#「ままごと」に傍点]をしてお遊びなされ、拙者お相伴いたしましょう」
 ここは神田神保町の、十二神《オチフルイ》貝十郎の邸であった。同じ夜の明け近い一時である。献上箱の蓋があいていたが、その中は空虚になっていた。その代り献上箱の横の方に、そうして小糸新八郎の、端坐している膝の脇に、京人形のよそいをした、お品が青褪めて坐っていた。
 二人の前に貝十郎がいた。
 その貝十郎の傍には、お勝手箪笥の『ままごと』が、抽斗《ひきだし》も戸棚もあけられた姿で、灯火に映えて置かれてあった。そこから取り出された酒や馳走類が、皿や小鉢や徳利に入れられて、三人の前に置かれてあった。
「実は松本伊豆守殿が、今日、一月十五日までに『ままごと』を一個納めるようにと、指物店山大へ命じたということと、お品殿が田沼侯
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