が、山家の屋根は小判で葺いてあり、窓や戸ぼそ[#「ぼそ」に傍点]や、板壁などは、金銀幣をもって装おってあり、庭上の小石は豆銀であり、青茅数株をあしらった裾に、伏させてあったほうぼう[#「ほうぼう」に傍点]は、活きた慣らした本物でござったよ」
「その際私もささやかな物を、お眼にかけました筈にございます」
「覚えておる、覚えておる」主殿頭は笑いながら、いそがしそうに頷いた。「小さな青竹の籃の中へ、大鱚《おおきす》七ツか八ツを入れ、少し野菜をあしらって、それに青|柚子《ゆず》一個を附け、その柚子に小刀を突きさしたものであった」
「その小刀と申しますのが……」
「存じておる、存じておる、柄に後藤の彫刻の、萩や芒をちりばめた、稀代の名作であった筈だ」
 薄縁《うすべり》の敷かれた長廊下には、現在諸家から持ち運ばれた無数の音物が並べられてあった。屏風類、書画類、器類、織物類、太刀類、印籠類、等々の音物であった。そういう音物類を照らしているのは、二人の先に立って歩いている、女の持っている雪洞《ぼんぼり》の火であった。紅裏を取り、表は白綸子《しろりんず》、紅梅、水仙の刺繍《ぬいとり》をした打ち掛けをま
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