再度貝十郎が声をかけた時、飛び石づたいに歩きながら、話して来るらしい二人の侍の、話し声がこっちへ近寄って来た。主屋と離れて別棟があり、諸侍達の詰め所らしかったが、そこから小姓らしい二人の侍の、手に何やら持ちながら、二人の方へ歩いて来た。
「殺生な奴はこの道具でござる。この貞操帯という奴で」こう云いながら一人の侍は、手に持っていた長方形の木箱を、ひょいと頭上へ捧げるようにした。
「女が発狂する筈でござる」
「この驢馬仮面に至っては、いっそう殺生な器具でござる」もう一人の侍がそういうように云って、四角の木箱を胸の辺で揺すった。
「これでは女が発狂する筈で」
「我々の役目も厭な役目で」前の侍がさらに云った。「着けたり冠せたりしなければならない」
「お品という女、美しいそうで」
「が、明日は狂女となって、醜くなってしまいましょうよ」
 云い云い二人の小姓らしい侍は、廻廊の方へ歩いて行った。が、蘇鉄《そてつ》の大株があり、それが月光を遮《さえぎ》っている、そういう地点までやって来た時、突然ワッという声を上げ、一人の侍が地に仆れた。
「これどうなされた? 粗忽《そこつ》千万な」
 後の侍が驚き
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