品端正な、両の肩が月の光を浴びて、仄《ほの》かに銀のように白っぽくおぼ[#「おぼ」に傍点]めき、肩の上に山形に載っている、編笠があたかも異様に大きい、一片の花の弁のように見えた。こうして町々を通り抜けた。
 と、行く手に余りにも宏壮な、大名の下屋敷が立っていた。
 そこの裏門まで行った時である。例の行列が開いた扉から、呑まれるように吸い込まれた。で、後は静かとなって、人の姿は見られなかった。しかしその時その門の前で、大きく笑う笑声がした。
 見れば館林様とその家来とが、門の前に立っていた。が、やがて引っ返して来た。そうして木蔭に身を隠していた、新八郎の横手を抜けて、元来た方へ帰って行った。
(稲荷堀の田沼侯の屋敷の前で、館林様には大笑なされた。あのお方の目的はとげられたという訳さ。……何故笑ったか知らないが、笑っただけでも痛快だ)
 新八郎はこう思いながら、木蔭から姿を現わした。
(ところで俺はこれからどうしたものだ?)
 家へ帰るより仕方がなかった。
(いろいろと変わった人間に逢い、いろいろ変わった事件に逢った。無駄な一夜だったとは云われない)
 彼は満足した心持ちで、元来た方へ引っ
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