第たるべし。ただ、諸士の流浪を不憫に思し召して如此《かくのごとく》なし給わば、莫大のご仁政なるべし」
こう徂徠は云っている。しかし公儀では採用しなかった。そこでそれだけの金や米を、大富豪から出させることによって、浪人の生活を安穏にしてやろう――その実行を名古屋からやろう。と云うのが館林様の計画だったそうだ。
そうとは我輩は知らなかったので、それにお町奉行の依田様から、館林様が名古屋へ行かれて、何やら大事をやられるらしい。尾張は御三家の筆頭で、公儀にとっては恐ろしいお家だ。そこで大事を起こされてはたまらぬ。と云って他領だから江戸町奉行としては、どうにも策の施しようがない。ついてはその方個人として出かけて館林様の行動を監視し、もし出来たら邪魔をするがよいと、こういう吩咐《いいつけ》を受けたので、ああいう行動をとったのだが、今ではかえって後悔している。そういう館林様の目的だったら、邪魔をするどころか賛成をして、あべこべにお助けしたものを。
が、我輩としては館林様から、あの六人の無頼漢どもを、離間させたことだけはよかったと今でも心を安んじている。頭領とも云うべき館林様が、それだけの大事業
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