ら出た! 真鍮《しんちゅう》の金具、五重の櫓、狭間《はざま》作りの鉄砲|檣《がき》! 密貿易の親船だ! 麝香《じゃこう》、樟脳、剛玉、緑柱石、煙硝、氈《かも》、香木、没薬《もつやく》、更紗、毛革、毒草、劇薬、珊瑚、土耳古《トルコ》玉、由縁ある宝冠、貿易の品々が積んである! さあ、日が落ちた、港へはいれ! 黎明《れいめい》が来たぞ、島へ隠れろ! ……大金がはいった、さあ上陸だ! 酒場、踊り場、寝台のある旅舎《はたご》! どれでも選べ、女を漁《あさ》れ! 飲め、酒だ、歌え! それよりもだ、バラードを鳴らして!」
 絶えようとしていたバラードの音が、この時活気を呈して来た。そうして嘉右衛門の見開かれた眼に、燠《おき》のような光が燃えて来た。
(歌うぞ?)と貝十郎は首を伸ばした。
(いよいよあの歌の次を歌うぞ!)亢奮せざるを得なかった。
 当然と云ってよいのである。彼はその歌を聞きたいがために、この夜ごろこの部屋へ入り込んで来て、なかば放心しなかば狂気し、しかも再び密貿易商として、海外へ雄飛しようとする夢を執念深く夢見していて、そのために気むずかしくなっており、そのために尊大になっており、あつ
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