つきで、
「張教仁君、手を延ばして、君の真正面へ出すがいい、真正面の空間に、何かブラ下がっている筈だ。そいつが僕の使命なのだ」
張教仁は無言のまま、両手をズウと出して見た。はたして正面の空間に、一筋の糸で支えられた二振りの抜き身の短刀が、上の方から下がっていた。張教仁はヒヤリとしたが、度胸に狂いは生じなかった。反抗心がムラムラと彼の胸中に起こって来た。
「こいつが使命だって云うんだな。つまり人殺しの使命だな。そんな事だろうと思っていた」
「殺人の使命と云うよりも、決闘の使命と云った方が、紳士らしくてよさそうだね」
眼に見えぬ男の言葉である。同じ言葉がまた云った。
「張教仁君、二振りのうち、君の好いた方を取りたまえ。残ったのを僕の武器《えもの》としよう。そして二人で自動車の中で、切り合おうじゃあるまいか」
「理由の知れない決闘を、僕はしようとは思わないよ」張教仁は云い放した。
「がしかしそいつは不可能だ!」相手の男は威圧した。
「僕は使命に従って、君と決闘せにゃならぬ」
「君は使命に従って、それじゃ僕を殺したまえ。そうして君の親玉に、決闘して殺したと云いたまえ。僕はこうして坐っている
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