の室で、じっと悲嘆に暮れるのでなければ、北京《ペキン》の市街を夜昼となく、紅玉《エルビー》を探して彷徨《さまよ》うのであった。紅玉《エルビー》の行衛をさがすためには、彼はもちろん警務庁へもすぐに保護願いを出したのではあったが、警務庁では相手にしない。相手にしないばかりでなく、こんな事をさえ云うのであった。
「事件の性質が性質ですから、屍骸を見つけるのならともかくも、生きている女を見つけようとしても、それは不可能のことですよ。この警務庁の庁内にもそういう事件がありまして、班長が命を失いました」
こんなような訳で、警務庁では、事件を冷淡に扱かって、行衛をさがそうともしなかった。
張教仁の身にとっては、紅玉《エルビー》は仕事の相棒でもあり、二人とない大事な恋人でもあった。その紅玉《エルビー》を失ったということは、精神的にも物質的にも、大きな打撃と云わなければならない。そしてもちろん彼にとっては、物質的の打撃よりも、精神的の打撃の方が遙かに遙かに大きかった。もしも紅玉《エルビー》が永久に、彼の手に戻らないとしたならば、彼の性格はそのことのために、一変するに相違ない。
「忽然として現われて来
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