難したのはあまり損でもなかったのだね」
「天の祐《たす》けというものでしょう」
 三人は愉快そうに哄笑した。林の中からは乙女の唄が尚のどやかに聞こえて来る。真昼の光で樹々の梢《こずえ》は黄金のように輝いている。

        二十四

 ボルネオ政庁の玄関には山のように人々が集まっていた。南国の空はよく晴れて朝陽がキラキラと輝いている。椰子《やし》の葉隠れに啼いている鳥も今日の門出を祝うようだ。一台の自動車が見物を分けて静かに前へ辷《すべ》り出た。車内にはラシイヌとダンチョンとマハラヤナ博士とマーシャル氏とが元気の溢れた顔をして悠然と坐席に着いている。この勇敢な探検隊をよく見ようとして群集は自動車の周囲《まわり》へ寄って来た。政庁の露台《バルコニー》には州知事をはじめサンダカン市の名誉職達が花束を持ちながら並んでいる。道路には警官が立ち並んで大声で群集を制している。家々の門には国旗が立てられ、街の四辻の天幕《テント》張りからは楽隊の音色が聞こえて来る。
 その時知事は露台《バルコニー》の上から、その探検の成功と隊員の無事とを祈りながら花束を自動車へ投げ込んだ。それに続いて名誉職達は
前へ 次へ
全239ページ中149ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング