博士がはいって来たが、レザールのいるのも気がつかないようにセカセカとラシイヌに云うのであった。
「唄を聞きたまえ! 土人乙女の唄を!」
「さっきから聞いてはおりますがね……」
ラシイヌは鷹揚に返辞《うけこた》える。
「で、君はあの唄をどう思うね?」
博士の口調は真面目である。
「どう思うと訊かれても困りますな。私は西班牙《スペイン》の人間でボルネオ土人ではありませんから、唄の文句さえ解りませんよ」
「なるほど」と博士は顔を顰《ひそ》め、「これはこの私の誤まりじゃ……それでは私が訳してあげよう。文句はきわめて簡単じゃからの」
それから博士はうたうような調子で土人の唄を訳して行った。
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昔、昔、大昔に
二羽の巨鳥《おおどり》が住んでいた
「人間を作ろうじゃあるまいか」
一羽の巨鳥がこう云うと
「そいつはおおきにいいだろう」
他の一羽もこう云った
いちばん最初《はじめ》に作ったのは
巨《おお》きな巨きな樹であった
二番目に彼らの作ったのは
堅い堅い石であった
「樹から人間は作れないよ」
「石からも人間はつくれないよ」
「水と土とで作ろうか」
「おおきにそいつ
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