、無数の商船や帆船の、マストや煙突が遙かあなたにボンヤリ聳《そび》えて見える所――その辺は闇のように暗かったが――そこまで一団が来た時に思いもよらない活劇が、電光《いなずま》のように湧き起こった。
二十
ちょうどそこまで来た時に、支那青年は走り寄り、さも憧憬に耐えないように、また心配に耐えないように、何か一声叫びながら面紗《ヴェール》の女を引っ抱え、その口に烈しくキッスをした。すると女は驚きのあまりあたかも気絶したように――見ようによっては悪夢から醒めて傍らの保護者に縋りついたかのように、支那青年に抱えられたまま微動をさえもしなくなった。驚いたのはダンチョンで、彼は甘い自分達の恋を妨げられでもしたかのように、平常《いつも》の彼に似もやらずやにわに拳を揮り上げて支那青年に跳び掛かった。こうしていまにも二人の間に格闘が演ぜられようとした時に、鋭く咆哮する猩々の声がすぐ耳もとで聞こえて来た。
と、闇の中からムラムラと二、三十人の人影が現われて、三人を中に取り込めた。そしてその時走り寄ったラシイヌをさえも包囲した。
こうしてそこに訳の解らない争奪戦が行われた。
二、
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