が室の中には沢山の人達がいると見えて、賑やかな声が聞こえていた。しかも賑やかなその声は、何かに酔ってでもいるように、濁った、だらしのない喉音《こうおん》である。
それから私は尚懲りずに、二、三の室の扉を叩いて見たがやっぱり返辞をするものがない。濁った、だらしのない、喉音だけがガヤガヤ聞こえて来るばかりである。一つの室からはハッキリと詩《うた》を唄うのが聞こえて来た。
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古木天を侵して日已に沈む
天下の英雄寧ろ幾人ぞ
此の閣何人か是れ主人
巨魁来巨魁来巨魁来
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「あの詩をうたっているんだな」
私は別に気にもかけず、先へズンズン歩いて行った。そして廊下の十字路のその中央に置いてある袁爺の銅像の前まで来て、像を見上げて佇んだ。
すると、忽然と、像の影から、一人の支那人があらわれた。見れば、意外にも、その男は、金雀子街で姿を見せた、穢い年寄りの苦力《クーリー》であった。今日もやっぱり酔っている。ヒョロヒョロとあぶなそうに歩いている。
「おや!」
と、私は仰山に、驚きの声を洩らしたのである。しかし老人は見向きもせず、右の方へユラユラと行きかけ
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