については、私は与《あずか》り知りません。張教仁君、さようなら! いずれどこかで逢うことでしょう」
慇懃な声が消えると一緒に、闇中にほのかに浮いていた男の姿も全く消え、車内も森然《しん》と静まった。
空には蒼白い月光が真昼のように照っている。月光を受けて銀のように、自動車の幌《ほろ》は光っている。往来には一人も人がいない。無人の街路をまっしぐらに、自動車は走って行く。
「世界の涯《はて》へでも行くがいい! 俺はどうなっても構わない」
張教仁は闇の中で、こう不機嫌に呟いた。すると、その時、走りに走った怪物のような自動車はさすがに疲れたというように、徐々に速度を弛《ゆる》め出した。
するとその時、行手の方で、厳《いか》めしい門でも開くような、ギギ――という音が聞こえて来た。そして、どうやら自動車は、その門の中へはいったらしく、一層速度が弛やかになった。やがて間もなく停まったのである。
突然自動車の扉が開いた。車外《そと》もやっぱり真っ暗である。
張教仁は躊躇《ちゅうちょ》もせずヒラリと自動車から飛び出した。
こうして物凄い「死の自動車」から、張教仁は遁《の》がれたけれど、その
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