もいよいよ私はその恩人を一目なりとも見たい希望に燃え立った。
その日も林で一日暮らして三日目の昼頃になった時少し林がまばらになって空の蒼味と陽の光とがいくらか仰がれる小丘へ出た。見るとその丘の頂きに三本の樫の木が立っていて、二丈あまりの高い所に風雨に曝《さ》らされた木小屋が一ついかにも厳重に造られてあって、丈夫な縄梯子が掛かっていた。小屋の古さに比らべて縄梯子はまだ新らしい。私は丘へ上って行って注意深く小屋を見上げて見た。その構造でその小屋が猛獣狩りに用立てるためずっと昔に造られたもので、今はもう誰もその小屋には住んでいないという事が感じられた。猛獣狩りの小屋だけに素晴らしく厳重に造られてある。四方の板壁には規則正しく三つずつの銃眼が造られてあるし正面の扉などは錆びてこそおれ鉄の一枚板でつくられてある。
私は念のため小屋に向かって幾度も呼んで見た。もちろん答えるものもない。そこで私は決心してそろそろと縄梯子を上って行った。小屋の内には予想した通り人間の住んでいる気配もない。ガランとして空虚である。熱帯|蜘蛛《ぐも》の大きな網が到る所にかかっている。床には塵埃《ほこり》が積もっている。そして木椅子や卓子が五人前ちゃんと揃っている。室は二つに仕切られてあった。奥の小部屋は寝室と見えてボロボロの寝具が敷かれてある。
「五人の勇敢な猟師どもがボルネオ虎や猩々や馬来《マレー》種の猪を獲るためにこの小屋の中に閉じこもって銃眼から猟銃を発《う》ったものらしい。沢山獲物が出来たので小屋をそのまま放擲《うっちゃ》ってどこかへ立ち去って行ったのだろう。風雨に曝らされた板壁の様子や床に積もった塵埃《ごみ》から推すと、三年、五年、もっと以前《まえ》から小屋は造られてあったものらしい」
こう思いながら尚私は室の様子を見廻した。すると今まで気が付かなかったが室の片隅のテーブルの上に、果実《このみ》がうず高く積んであって椰子の実で拵えた椀の中に飲料水さえ盛ってある。ちょっと驚いて眼を見張ったがそれでもすぐに感付いた――
「眼に見えない例の恩人」が昼食を送ってくれたのだろう。
そこで木椅子へ腰掛けて味の好い賜り物を頂戴した。それから小屋に別れを告げて縄梯子を伝って下りようとした。その縄梯子が見当らない。ほんの先刻まで掛かっていた棕櫚縄の梯子が見当らない。私は呆然と突っ立ったまま考えることさ
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