うとしても重い眼瞼《まぶた》は益※[#二の字点、1−2−22]重くどうすることも出来なかった。それでも私は努力した。そしてようやく薄目を開けてあたりの様子を見ようとした。するとその時私の体を撫で廻していた手が止まった。いくらあたりを見廻してもそれらしい人の姿もない。ただここに一つ不思議なことには日光から私を防ぐため棕櫚《しゅろ》で拵えた大きな笠が私の体を蔽うている。そして砂地に足跡がある。跣足《はだし》の人間の足跡である。その足跡は海岸の背後《うしろ》の大森林まで続いている。岸辺を見ると繋ぎ止められたボートが水に浮かんでいて舟の中には元通り短銃《ピストル》や万年筆が置いてある。私はそこまで這って行ってそれらの物を取って来たが、もう這うことも出来なくなった。私は腹を砂の上へ丸太のように転ってそのまま昏々と眠りに入った。そうして再び目覚めた時には私の側に椰子の果実《このみ》と呑み水とが一椀置いてあった。果実《このみ》を食って水を飲むと私はようやく元気づいた。棕櫚笠を頭に戴いて短銃と弾丸帯を腰に着けて手帳と万年筆とは下衣に隠して林の方へはいって行った。何より先に蘇生させてくれた恩人の姿を見つけようと足跡を手頼《たよ》りに進んで行ったが、林へはいると雑草に蔽われ見出すことが出来なかった。雑草は丈《たけ》延びて身丈《せい》よりも高く林の中は夜のように暗い。喬木はすくすくと空に延し上がり葉と葉は厚く重なり合い数町あるいは数里に渡って緑の天蓋を造っている。太古のままの静けさが森林の中に巣食っている。鳥も啼かず人影もなく風さえ葉の壁に遮《さえぎ》られて林の中までは吹いて来ない。
自然の厳粛に打ち拉《ひし》がれて私は茫然と立ち尽くした。いったいどうしたらいいのだろう? これから俺はどうしよう? こう思って来て自分ながら恐ろしい運命に戦慄した。
二十七
どっちへ行こうかと森林の中を途方に暮れて見廻した時、またも奇蹟が発現《あら》われた。こっちへ来いというように丈なす草が苅り取られ小径が出来ているではないか!
「足跡の主に相違ない」
私はすぐにこう思った。それで少しも躊躇せずに小径を奥へ歩いて行った。私は幾時間歩いたろう? 体が綿のように疲労《つか》れて来た。私は一歩も進めなくなった。ここでこのまま倒れたなら猛獣毒蛇の恐ろしい牙がすぐにも噛みつくと思いながらどう
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