より彼らに敵意を示さなかった。貯蔵《ため》ていた食料を取り出して来て惜し気もなく彼らと交換した。そして一行を歓待して土人流の宴会を開催《ひら》いてもくれた。羽毛を飾った兜《かぶと》を冠って人間の歯の頸飾りをかけ、磨ぎ澄ました槍を手に提げ宴会の庭へ下り立って戦勝祝いの武者踊りをさも勇猛に踊ってくれた。もっとも時には一行に向かって敵意を現わす部落もあった。バンバイヤ河の水源のバンバイヤ湖へ来た時に突然|葦《あし》の繁みから毒矢を射出す者があった。味方の土人が五、六人それに当たって地に倒れた。それに驚いた味方の土人は一度に後に退いたが旋条銃の狙いをよく定めてやがて一斉にぶっ放した。次第に消えて行く煙りの間から湖水の方を眺めて見ると独木舟《まるきぶね》がおよそ十五、六隻|周章《あわ》てふためいて逃げて行く。多数の死傷者があるらしい。味方の土人は勢いを得て岸に沿うて敵を追おうとしたがラシイヌはそれを許さなかった。伏兵のあるのを恐れたからだ。味方の負傷者を調べて見るといずれも傷は浅かったが、鏃《やじり》に劇毒が塗りつけてあるので負傷者はのた打って苦しがる。そしてだんだんに弱って行く。マーシャル医学士は智恵を絞って負傷者のために尽くしたけれど、二人だけはその夜息が絶えた。土人の死骸を埋葬してから一行は尚進んで行った。一つの部落へ着いた時、不思議にも部落は空虚《から》であった。一人の土人の姿もない。そこで一行は安心して部落の空地へ天幕を張って、その夜の旅宿をそこに定め各※[#二の字点、1−2−22]眠りにつこうとした。ちょうど真夜中と覚しい頃、突然部落の家々から一斉に焔《ほのお》を吐き出したので、一同は初めて土人達の計略に落ちたことを感付いた。焔はその間も天幕を包んで四方から刻々に襲って来る。立ち昇る火の粉を貫いて雨のように毒矢が降って来る。無智の土人達は火を怖れて消そうともせず顫《ふる》えている。馬や水牛やボルネオ犬は――いずれも荷物を運ばせるために市《まち》から連れて来た家畜であるが――火光に恐れて手綱を切って焔を目掛けて飛び込もうとする。味方は火薬を持っているだけに危険の程度が大きいのであった。火焔が天幕を焼くようになったら自《おのず》と火薬は爆発しよう。五十貫の火薬箱がもし一時に爆発したら、一行百余人の生命《いのち》は粉な粉なになって飛んでしまうだろう!
 ラシイヌもレザー
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