れて生活していたというものさ。聞けば護謨園とサンダカンとは、三十|哩《マイル》足らずの道程で自動車も通うということだったので、園の事務員にお願いして君の所へ昨日遅く電報を打ってやったんだが、こんなに早く来て貰ってみんなも心強く思うだろう」
 ラシイヌはやおら立ち上がって、窓へ行って戸外《そと》を覗いたが、
「護謨林の様子を見るとか云ってさっきみんな戸外へ出て行ったが、そのうち帰って来るだろう」
 こう云うと長椅子へ腰を下して前途の冒険を考えるかのように軽くその眼を閉じたのであった。
 木小屋《バンガロー》式の建物の内はしばらくの間静かであった。窓を通して真昼の陽が護謨林の頂きから射して来るのが室の板壁へ斑点を着けそこだけ黄金色に輝いている。聞いたこともないような南洋の鳥が林から広場へ飛んで来て、窓の方を横目で見やりながら透明の声で唄っているのが、室の中に寝ている病人達を慰めているようにも思われる。林の中のあちこちから護謨液採りの土人乙女の鄙《ひな》びた唄声も響いて来る。亡国的の哀調を含んだ、しかものびやかな調べである……。

        二十三

 その時正面の扉をあけてマハラヤナ博士がはいって来たが、レザールのいるのも気がつかないようにセカセカとラシイヌに云うのであった。
「唄を聞きたまえ! 土人乙女の唄を!」
「さっきから聞いてはおりますがね……」
 ラシイヌは鷹揚に返辞《うけこた》える。
「で、君はあの唄をどう思うね?」
 博士の口調は真面目である。
「どう思うと訊かれても困りますな。私は西班牙《スペイン》の人間でボルネオ土人ではありませんから、唄の文句さえ解りませんよ」
「なるほど」と博士は顔を顰《ひそ》め、「これはこの私の誤まりじゃ……それでは私が訳してあげよう。文句はきわめて簡単じゃからの」
 それから博士はうたうような調子で土人の唄を訳して行った。

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昔、昔、大昔に
二羽の巨鳥《おおどり》が住んでいた
「人間を作ろうじゃあるまいか」
一羽の巨鳥がこう云うと
「そいつはおおきにいいだろう」
他の一羽もこう云った

いちばん最初《はじめ》に作ったのは
巨《おお》きな巨きな樹であった
二番目に彼らの作ったのは
堅い堅い石であった

「樹から人間は作れないよ」
「石からも人間はつくれないよ」
「水と土とで作ろうか」
「おおきにそいつ
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