に、女はキーツと悲鳴を上げ、壁を伝つて天井裏へ、鼠のやうに隠れたり。この物音に眼を醒ましたる本条純八は只茫然と、松蔵の顔を眺めるのみ。精神脱楽人事を弁ぜず、まして言葉を出す由も無し、今は是迄と松蔵は、純八の頭を打ち落し、尚女めを仕止めんものと、落ち散る丸木をおつ取つて、ハツと天井を突き上ぐれば、板目破れて其隙間より、五尺あまりの真黒の物ドツと落ちたるを好く見れば、四つの手脚人間に似たる、守宮なり[#底本では「宮守なり」]、松蔵も流石に驚き、思はず呼吸を呑みたるも、やがて刀を持ち直し、グサと背骨を突き通し、弱る所を足で踏まへ、直ちに首を落したり。云々。(下略)」



底本:「妖異全集」桃源社
   1975(昭和50)年9月25日発行
入力:地田尚
校正:小林繁雄
2002年2月18日公開
青空文庫作成ファイル:
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