(こやつを一気に片付けて、源女の在所《ありか》を突き止めなければならない!)
「ヤ――ッ!」と掛けた物凄い掛声!
つづけて「ヤヤ――ッ、ヤヤ――ッ、ヤヤ――ッ!」
先々の先の手一杯! さながら有段者が初心者を相手に、稽古をつけるそれの如く、主水が撃とう切ろう突こうと、心組む心を未前[#「未前」はママ]に察し、その先その先その先と出て、追い立て切り立て突き立て進んだ。
またもや主水は薮際まで詰められ、眼眩みながら薮の裾を、右手へわずか廻り込もうとした時、天運尽きたか木の根に躓《つまず》き、横倒れにドッと倒れた。
「くたばれ!」
シ――ンと切り下した!
11[#「11」は縦中横]
シ――ンと切り下ろした陣十郎の刀が、仆れている主水を拝み打ちに、眉間から鼻柱まで割りつけようとした途端、日の光を貫いて小柄が一本、陣十郎の咽喉へ飛んで来た。
「あッ」と思わず声を上げ、胸を反らせた陣十郎は、あやうく難を免れたが、小柄の投げられた方角を見た。
十数間のかなたから、一人の武士が走って来る。
「む!……秋山! ……秋山要介!」
いかにも走って来るその武士は、今朝になって眼醒めて見れば、
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