すと、若い女が来かかりました。あの辺りのことで厶るによって、夜鷹でもあろうと推察し、近寄ってヒョイと手を取りましたところ、その手を逆に返されまして、途端に拙者ころびましたが、どうやら女に投げられたようで」
「アッハッハッ」と一同は笑った。
「女をころばすのは判っているが、女にころばされるとはサカサマじゃ」
「そこが色男の本性かな」
「その女|柔術《やわら》でも出来るのかな?」
「さようで」と金彌という武士は云った。
「零落をした武家の娘――と云ったような様子でござった。身装は穢くありましたが、顔や姿は美しく上品でありましたよ」
 この時川上嘉次郎と、古巣右内とが囁き合い、金田一新助へ耳うち[#「うち」に傍点]をした。すると新助はニヤリと笑い、二三度頷いて立ち上り、つづいて嘉次郎と右内とが立ち、こっそり部屋を出て行った。
 雑談に余念[#「余念」は底本では「余年」]のない一座の者は、誰もそれに気がつかなかったが、床柱に背をもたせかけコクリコクリと居眠りをしていた、秋山要介一人だけが、この時ヒョイと眼をあげて、三人の姿を見送って、審しそうに眉をひそめた。
 しかし眉をひそめただけで、声もか
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