、充分用心しろよ。……試合などとは思うなよ。……俺を父親の敵《かたき》と思い――事実それに相違ないし……その敵を今討つのだと、こう思って真剣にかかって来い」
「うむ。よし。そのつもりで行こう」
「俺もお前を返り討ちにすると――こう思ってかかって行くつもりだ」
「うむ、そのつもりでかかって来てくれ」
「暗中での『逆ノ車』……ダ――ッとお前の左胴へ、事実入るかもしれないぞよ」
「…………」
「暗中だからな。……どうなるかわからぬ……」
「…………」
「本当にお前を切るかもわからぬ」
「…………」
「暗中だからな……よく見えぬからな」
「…………」
「とすると返り討ちだ。……返り討ちになっても怨むなよ。参るぞ――ッ」と忍音ではあったが、殺す気でかけた鋭い声! それが主水の耳を打った。
(あぶない!)と瞬間主水は思った。
(おかしいぞ! いつもとは違う! ……本当に切る気ではないだろうか?)
主水は自ずと一所懸命になった。
刀を中段にピッタリと構え、闇を通して相手を睨んだ。
暗中ながら相手の姿が、黒く凄まじく立っているのが見え、これも中段に構えている刀が、ボ――ッと薄白く感じられた。
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