してあの時から今日まで、そう日数は経っていない、わし[#「わし」に傍点]の消息を知ろうとして、あの土地に居附いていたと云える。とすると木曽の福島へ、納めの市へ馬大尽ともども、猪之松が行くということや、その猪之松の賭場防ぎの、陣十郎も行くということや、陣十郎が行く以上それを追って、わし[#「わし」に傍点]が行くだろうということを、澄江は想像することが出来る。ではそのわし[#「わし」に傍点]に逢おうとして、単身でこのような土地へ来ること、あり得べからざることではない)
 こんなように思われるからであった。
(あの旅籠は鍵屋とかいったはずだ。距離も大して離れてはいない。行って様子を見て来よう)
 矢も楯もたまらないという心持に、主水は襲われずにいられなかった。
(が、お妻に悟られては?)
 それこそ大変と案じられた。
(爾来《あれから》二人が夫婦ならぬ夫婦、妻ならぬ妻のような境遇に――そのような不満足の境遇に、お妻ほどの女が我慢しているのも、あの時以来澄江のことを、自分が口へ出そうとはせず、あの時以来澄江のことを、思っているというような様子を、行動の上にも出そうとはせず、ただひたすらにお妻の
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