た。
「いかにも」と主水は苦しそうに云った。
「それを思わずに居られましょうか。……討ち取らねばならぬ父の敵《かたき》! 陣十郎の寵女、お妻殿がそれだと知りましては、心許されぬはともかくも、何で貴女《あなた》様のお志に……」
「従うことなりませぬか」
「不倶戴天の[#「不倶戴天の」は底本では「不具戴天の」]敵の情婦に……」
「では何でおめおめ助けられました」
「助けられたは知らぬ間のこと……」
「では何で介抱されました……」
答えることが出来なかった。思われるはただ機を失した! 機を失したということであった。
助けられたその翌日、訊ねられるままにお妻に対し、主水は姓名から素性から、その日の出来事から敵討のことから、敵の名さえ打ち明けた。
と、お妻は驚いたように、主水の顔を見詰めたが、やがて自分が陣十郎の情婦、お妻であることを打ち明けた。
これを聞いた時の主水の驚き!
同時に思ったことといえば、
(助けられなければよかったものを!)
――というそういうことであり、直ぐにも立ち退こうということであった。
6
(直ぐに立ち退いたらよかったものを)
今も主水《もんど》はこう思っ
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