3
「おい」と陣十郎は小声で呼んだ。
「おい爺《とっ》つぁん、ちょっと来てくんな」
生垣越しに小手招きした。
裏の座敷にはお妻がいるはずだ。
「へい」とも返辞が出来なかった。
顫えの起こった痩せた体を、で弁三はヒョロヒョロと立たせ、庭下駄を穿くのもやっとこさで、陣十郎の方へ小走って行った。
生垣を出ると村道である。
と、陣十郎がしゃがみ[#「しゃがみ」に傍点]込んだので、向かい合って弁三もしゃがみ込み、
「へ、へい、これは水品様……」
「爺つぁん、お妻が来たようだね」
「オ、お妻さんが……へい……いいえ」
「へい、いいえとはおかしいな。へい[#「へい」に傍点]なのか、いいえ[#「いいえ」に傍点]なのか?」
「へい……いいえ……いいえなので」
「とすると俺の眼違いかな」
「………」
「恰好がお妻に似ていたが……」
「…………」
「ナーニの、俺ら家を出てよ、親分の家へ行こうとすると、鼻っ先を女が行くじゃアないか。滅法粋な後ろ姿さ。悪くねえなア誰だろうと、よくよく見ると俺の女房さ。アッ、ハッハッそうだったか、女房とあっては珍しくねえ、と思ったがうち[#「うち」に傍点]の女房ども
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