色づいた[#「色づいた」は底本では「色ずいた」]病葉《わくらば》が微風にあおられ体の上へ落ちて来たりした。
かなり長い間しずかであった。
と、その時人声がし、間もなく十数人の男女の者が、森の中へ現われた。
変わった風俗の連中であった。
赤い頭巾に赤い袖無、そんなものを着けている若い男もあれば、亀甲模様のたっつけ[#「たっつけ」に傍点]を穿き、胸に大形の人形箱をかけた、そういう中年の男もあり、紫の手甲に紫の脚絆、三味線を抱えた女もあり、浅黄の股引、茶無地の筒袖、そういう姿の肩の上へ、猿をとまらせた老人などもあった。
それらはいずれも旅装であった。
秩父|香具師《やし》の一団なのである。
平素は自分の家にいて、百姓もやれば杣夫《そま》もやり、猟師もやれば川狩もやるが、どこかに大きな祭礼があって、市《たかまち》が立って盛んだと聞くと、早速香具師に早変りして、出かけて行って儲けて来、家へ帰れば以前通り、百姓や杣夫として生活するという――普通の十三香具師とは別派の、秩父香具師の一団であった。
この日もどこかの市を目掛け親しい者だけで組をつくり、出かけて行くところらしい。
そ
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