ず、日に日に憂欝になり衰弱して行くように。……薪左衛門が、過去の罪悪の形見の道了塚を附近《ちかく》に持ち、そこへ日参したということは、彼を憂欝にし彼を衰弱させたらしい。
「衰弱している私の所へ、博徒の頭、松戸の五郎蔵と成った勘兵衛が来て、私を威嚇《おど》したのじゃ、典膳よ、恥ずかしながら私《わし》は、その時以来今日まで発狂していてのう」
「又兵衛殿オーッ、私はその勘兵衛のために、嬲り殺しにかけられ、コ、このありさまにござりまする!」
「全身血|達磨《だるま》! どうしたことかと思ったに、勘兵衛めに嬲り殺し※[#感嘆符疑問符、1−8−78] ……どこで? どうして?」
この時嘲笑うような声が聞こえて来た。
道了塚の縁起
「嬲り殺しには府中でかけた! 理由《わけ》か? 強請《ゆす》りに来たからよ」
それは五郎蔵であった。林から抜けて、典膳の後を追って来た五郎蔵であった。年にも似ない逞ましい足をからげた衣裳の裾から現わし、抜き身をひっさげ、典膳の背後に立っていた。
「又兵衛!」と、五郎蔵は、典膳などには眼もくれず、はだかった襟から、胸毛の生えている肉厚の胸を覗かせ、鷲《わし》のような眼をヒタと塚の頂きの薪左衛門へ据え、呼ばわった。
「久しぶりで、妙な所で逢ったのう。……さて、くどい事は云わぬ、ここで逢ったを幸い、始末をする! 典膳と一緒に」
「…………」薪左衛門は、五郎蔵を認めた瞬間顔色を変えた。恐怖で蒼褪めた。しかし、五郎蔵の言葉の終えた頃には、口もとに、皮肉の微笑を漂わせていた。
「又兵衛」と五郎蔵は、相手を呑んでかかった、悠々とした声で云いつづけた。「俺とお主とは、昔は兄弟分、随分、仲もよかった。そうして現在《いま》でも、大して怨恨《うらみ》を持ち合っているという訳でもない。二十年前ここでお主と斬り合ったのも、東十郎を殺す助けるの意見の相違からに過ぎなかった。その後お前の屋敷へ訪ねて行ったのも、実はお主がどのような生活《くらし》をしているか知りたかったまでよ。だからよ、何もここでお主を討ち果たす必要はなさそうだが、だがやっぱり討ち果たさなければいけないなあ。というのはこの男の悪い例があるからよ」と、はじめて典膳の方へ眼をやり、抜き身の峰で、典膳の肩の辺を揶揄《やゆ》するように叩いたが、「俺アこの男へは相当の手当をし『これまでの縁だ、今後はお互いに他人
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