屋にいた。変なお婆さんが何か云った。一言も妾《わたし》には解《わか》らなかった」
 お紅は空腹を感じて来た。人が気絶から醒めた時には、空腹を感じるものである。
「妾に下された食物なのであろう。では妾は遠慮なく食べよう」
 で、お紅は手を延ばして、順々に食物を食べて行った。
「ああ妾は咽喉《のど》が乾いた。水注の水を飲むことにしよう」
 で、咽喉を潤《うる》おした。
 しかしお紅は知らなかった。それらの食物や水の中に、愛慾をそそる××質が――麝香《じゃこう》とか、芫花《けんか》とか、禹余糧《うよりょう》とか陽起石《ようきせき》とか、狗背《くはい》とか、馬兜鈴《ばとれい》とか、漏蘆《ろろ》などというそういう××質が、雑ぜられてあるということを。
 ただお紅は飲食をしたため、にわかに体が活々となり、元気づいて来たということと、恍惚《うっとり》とした甘い気持が、心に湧いたということを、感ずることが出来たまでであった。
「体が汗にぬれている。妾は風呂へ入ることにしよう」
 で、お紅は立ち上ったが、念のために部屋の中を見廻してみた。
 が、誰も見ていない。
 で、そろそろと帯を解いて。一枚々々衣装
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