「おおそうか、蓋なのか」と、擦ったに連れて独楽の面が弛み、心棒を中心にして持ち上ったので、そう主税《ちから》は呟いてすぐにその蓋を抜いてみた。
 独楽の中は空洞《うつろ》になっていて畳んだ紙が入れてあった。
 何か書いてあるようである。
 そこで、紙を延ばしてみた。
[#ここから3字下げ]
三十三、四十八、二十九、二十四、二十二、四十五、四十八、四、三十五
[#ここで字下げ終わり]
 と書いてあった。
(何だつまらない)と主税は呟き、紙を丸めて捨ようとしたが、
(いや待てよ、隠語《かくしことば》かもしれない)
 ふとこんなように思われたので、またその紙へ眼を落とし、書かれてある数字を口の中で読んだ。
 それから指を折って数え出した。
 かなり長い間うち案じた。
「そうか!」と声に出して呟いた時には、主税の顔は硬ばっていた。
(ふうん、やはりそうだったのか、……しかし一体何者なのであろう?)
 思いあたることがあると見えて、主税はグッと眼を据えて、空の一所へ視線をやった。
 と、その視線の遥かかなたの、木立の間から一点の火光《ひかり》が、薄赤い色に輝いて見えた。
 その火はユラユラと
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