を説き廻ったということである。
 淀屋の財宝はどうなったか? 一つに集まった独楽と一緒に、いぜんとして古沼の島の中にあるか、飛加藤の亜流やお八重の手により、他の場所へ移されたか? 謎はいまだに謎として、飛加藤の亜流とお八重以外には、知る者一人もないのであった。しかし飛加藤の亜流の教義が、その後ますます隆盛になり、善人に対し善事に対し、飛加藤の亜流は惜気もなく、多額の金子を与えたというから、淀屋の財宝はその方面に、浄財としてあるいは使われたのかもしれない。
 松女がその後有髪の尼として、清浄の生活を継続し、良人や主馬之進をとむらいながら、主税[#「主税」は底本では「主悦」]夫婦やお葉によって孝養されたということや、お葉が良縁を求めながら、その優しい心持から、藤八猿を可愛がり、いつまでも手放さなかったというようなことは、あえて贅言する必要はあるまい。



底本:「国枝史郎伝奇全集 巻六」未知谷
   1993(平成5)年9月30日初版発行
初出:「講談雑記」
   1936(昭和11)年1月〜10月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくってい
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