のような物が飛び込んで来た。
それは藤八猿であった。
乱闘の際に懐中《ふところ》から落とした、主税[#「主税」は底本では「主悦」]の持っていた淀屋の独楽が、部屋の片隅にころがっているのへ、その藤八猿は眼を付けると、それを抱いて部屋を飛び出し、雨戸の隙から庭へ下り、さらに林の中へ走り込んだ。
でも古沼の縁まで来た時、その独楽にも飽きたと見え、沼を目掛けて投げ込んだ。
と独楽は自ずと動いて、小島の方へ進んで行った。飛加藤の亜流が超自然の力で、独楽を島の方へ招いたのでもあろうか。いややはり長虫が巻き付いていて、島の方へ泳いで行ったからである。
お八重よりも一層生死を共にし、苦難に苦難を重ねたところの、あやめ[#「あやめ」に傍点]と主税[#「主税」は底本では「主悦」]とは夫婦になり、一旦は辛労で気絶したものの、息吹き返した貞婦の松女や、妹娘のお葉と一緒に、荏原屋敷に住むようになったのは、それから間もなくのことであり、そういう事実をさぐり知り、主税[#「主税」は底本では「主悦」]との恋を断念したお八重は、父の許秩父の山中へも帰らず、飛加藤の亜流の弟子となり、飛加藤の亜流に従って、世人
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