「お母様アーッ」
「お母様アーッ」
意外の事の真相に、心を顛動させた二人の娘は、左右から母へすがりついた。
「そうとは知らずお母様を怨み……」
「そうとは知らず主馬之進殿を殺し……」
「わたしたちこそどうしよう!」
「お母様アーッ」
「主馬之進様アーッ」
「いやいや」と、本当に最後の息で、主馬之進は言葉を発した。
「やっぱりわしは殺されていい男……荏原屋敷を横領し、隠されてある淀屋の財宝を、ウ、奪おう、ト、取ろうと……殺されていい身じゃ殺されていい身じゃ」
まったく息が絶えてしまった。
途端に松女もガックリとなった。
この時階段の上り口から、勘兵衛の狼狽した喚き声が聞こえた。
「不可《いけ》ねえ、殺《やら》れた、旦那が殺れた! ……オ、奥様も死んだらしいわ――ッ」
バタバタと階段から駈け下りる音が、けたたましく聞こえてきた。
しかし、その音は中途で止んで、呻き声が聞こえてきた。見れば階段の中央の辺りに、勘兵衛の体が延びていた。
紐が首に捲き付いている。
そうしてその紐は手繰《たぐ》られて、勘兵衛の体は階段を辷って、二階の方へ上って行った。紐を手繰っているのはあやめ[#
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