は、これまでの苦心も水の泡だ)
こう思われるからであった。
(俺も沼の中の島へ行こう)
――頼母は飛加藤の亜流の後を追い、沼の方へ小走った。
頼母が沼の縁へ行きついた時、彼の眼に不思議な光景が見えた。
月光に薄光っている沼の上を、飛加藤の亜流という老人が、植木師風のお八重を連れ、まるで平地でも歩くように、悠々と歩いて行くのであった。重なっていた浮藻が左右に別れ、水に浮いて眠っていた鴨の群が、これも左右に別れるのさえ見えた。
(水も泥も深い沼だのに、どうして歩いて行けるのだろう?)
超自然的の行動ではなくて、水中に堤防が作られていて、陸からはそれが見えなかったが、飛加藤の亜流には解《わか》っていたので、それを渡って行ったまでである。しかし頼母には解っていなかったので、呆然佇んで見ていたが、
(そうだ、飛加藤の亜流には、出来ないことはないはずだった。水を渡ることなど何でもないのだろう。……飛加藤の亜流にさえ従《つ》いて行けば、こっちの身も沼を渡れるだろう)
頼母は沼の中へ入って行った。
しかし数間とは歩けなかった。水が首まで彼を呑んだ。蛭、長虫が彼を目指し、四方八方から泳ぎ寄
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