て、あやめ[#「あやめ」に傍点]が下を見下ろしている。
「あッ、お姉様! どうしてそこには?」
しかしあやめ[#「あやめ」に傍点]はそれには答えず、松女の姿へじっと眼をつけ、
「お葉やお葉や、そこにいるのは?」
「お母様よ! お姉様!」
「お母様だって? 良人《おっと》殺しの!」
「…………」
「良人殺しの松女という女かえ!」
「…………」
「よくノメノメとここへは来られたねえ」
「いいえお姉様」とお葉は叫んだ。
「わたしがお母様をここまで連れて……」
「お前がお母様を? 何のために?」
「お父様を殺したあのお部屋へ、お母様をお連れして懺悔させようと……」
「その悪女、懺悔するかえ?」
「あやめ[#「あやめ」に傍点]や!」とはじめて松女は叫んだ。
連続して起こる意外の出来事に、今にも発狂しようとして、やっと正気を保っている松女が、嗄《しゃが》れた声で叫んだのである。
「あやめ[#「あやめ」に傍点]や……お前までが……この屋敷へ! ……いいえいいえ生みの家へ……おおおお帰っておいでだったのか! ……あやめ[#「あやめ」に傍点]や、あんまりな、あんまりな言葉! ……悪女とは! 懺悔する
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