あげた。
 二階の雨戸が開いており、梯子がかかっているからであった。
「あッあッ雨戸が開いている! ……十年このかた開けたことのない、閉扉の館の雨戸が雨戸が! それに梯子がかかっているとは!」
 松女は梯子の根元の土へ、恐怖で、ベッタリ仆れてしまった。
 その母親の側《そば》に突っ立ち、これも意外の出来事のために、一瞬間放心したお葉がいた。
 しかし直ぐお葉は躍り上って叫んだ。
「これこそお父様のお導き! お父様の霊のお導き! ……妻よここへ来て懺悔せよと、怒りながらも愛しておられる、お父様の霊魂が招いておる証拠! ……そうでなくて何でそうも厳重に、十年とざされていた閉扉の館の、雨戸が自然と開きましょうや! ……梯子までかけられてありましょうや!」
 母親の手をひっ掴み、お葉は梯子へ足をかけた。
「お母様!」と松女を引き立て、
「さあ一緒に、一緒に参って、お父様にお逢いいたしましょう! いまだに浮かばれずに迷っておられる、悲しい悲しいお父様の亡魂に!」

   月下の殺人

「お葉かえ!」とその途端に、二階から女の声がかかった。
 お葉は無言で二階を見上げた。
 欄干から半身をのり出し
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