したのに、主税もあやめ[#「あやめ」に傍点]も消えてなくなったように、姿をくらましてしまいましたとは? ……不思議を通りこして気味のわるいことで」
「沼へ落ちたのではございますまいか?」
覚兵衛が横から口を出した。
「沼へ落ちたのなら水音がして、あっし[#「あっし」に傍点]たちにも聞こえるはずで」と勘兵衛が側《そば》から打ち消した。
「ところが水音なんか聞こえませんでしたよ。……天に昇ったか地にくぐったか、面妖な話ったらありゃアしない」
「主馬!」と頼母は決心したように云った。
「主税とあやめ[#「あやめ」に傍点]との隠れ場所は、閉扉の館以外にはないと思うよ。彼奴《きゃつ》らなんとかしてこの戸をひらき、屋内《なか》へ入ったに相違ない。戸を破り我らも屋内へ入るとしよう! ……それでなくともこの閉扉の館へ、わしは入ろうと思っていたのだ。淀屋の財宝を手に入れようとして、長の年月この荏原屋敷を、隅から隅まで探したが、この館ばかりは探さなかった。其方《そち》や松女が厭がるからじゃ! が、今夜はどうあろうと、屋内へ入って探さなければならぬ」
「兄上! しかし、そればかりは……」と主馬之進は夜眼に
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