れ」
浪人たちの方へ頼母は云った。
二人の浪人が立ち上り、襖《ふすま》をあけて部屋から出た。
「覚兵衛《かくべえ》も勘兵衛《かんべえ》も飲むがよい」
「は」
「頂戴」
「さあさあ飲め」
賑かに盃が廻り出した。
たちまち烈しい足音が、廊下の方から聞こえてきたが、出て行った二人の浪人の中、坂本というのが走り帰って来た。
「一大事! 一大事でござりまする……主税め縄を切り八重を助け……部屋を脱け出し庭の方へ! ……本庄殿は主税に斬られ! ……拙者も一太刀、左の肩を!」
見ればなるほどその浪人の肩から、胸の方へ血が流れ出ていた。
「行け!」と頼母は吼えるように叫び、猛然として躍り上った。
「主税を捕らえろ! 八重を捕らえろ! ……手に余らば斬って捨ろ!」
一同一斉に部屋を走り出た。
独楽を奪われる
八重を小脇に引っ抱え、血に濡れた刀をひっさげて、山岸主税《やまぎしちから》は庭へ出た。
猿によって縛めの縄を切られ、勇躍してお八重へ走り寄り、その縛めの縄を解いた。すると、そこへ二人の武士が来た。やにわに一人を斬り伏せて、お八重を抱え廊下を走り、雨戸を蹴破り庭へ出た。
そ
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