戯作者
国枝史郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)お菊《きく》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)滝沢|清左衛門《せいざえもん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)のっけ[#「のっけ」に傍点]
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初対面
「あの、お客様でございますよ」
女房のお菊《きく》が知らせて来た。
「へえ、何人《だれ》だね? 蔦屋《つたや》さんかえ?」
京伝《きょうでん》はひょいと眼を上げた。陽あたりのいい二階の書斎で、冬のことで炬燵《こたつ》がかけてある。
「見たこともないお侍様で、滝沢《たきざわ》様とか仰有《おっしゃ》いましたよ。是非ともお眼にかかりたいんですって?」
「敵討ちじゃあるまいな。俺は殺される覚えはねえ。もっともこれ迄草双紙の上じゃ随分人も殺したが……」
「弟子入りしたいって云うんですよ」
「へえこの俺へ弟子入りかえ? 敵討ちよりなお悪いや」
「ではそう云って断わりましょうか?」
「と云う訳にも行かないだろう。かまうものか通しっちめえ」
女房が引っ込むと引き違いに一人の武士が入って来た。大髻《おおたぶさ》に黒
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