意した。
だが顔色は蒼白かった。それも彼女の好嗜からであった。血色のよい赦ら顔は、田舎者に間違えられる恐れがあった。都会の貴婦人というものは、蒼い顔でなければ面白くない。どうやら彼女は仏蘭西《フランス》あたりの、青色の白粉《おしろい》を使うらしい。
臀部が目立って小さくなった。そうして腰が細くなった。彼女の姿勢は立ち勝って来た。
肌が真珠色に艶めいて来た。それは冷たそうな艶であった。
肌理《きめ》が絹のように細かくなった。
きっと滑らかなことだろう。
だが触れることは出来なかった。彼女がそれを断わるからであった。
遥拝しなければならなかった。
又その方がある意味から云って、私にとっても幸せであった。うっかり障《さわ》って手が辷って、転びでもしたら困るからであった。
「ああ彼女には洋装が似合う」
ある時私はつくづく云った。決して揶揄的の讃辞ではなかった。
その心配は無用であった。
翌日洋装が届けられた。肌色と同じ真珠色であった。
それを着て彼女は出かけようとした。
チラリと私の顔を見た。瞼を二度ばかり叩いて見せた。
命ずるような眼付きであった。
私は周章《あ
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