様神様お助けください! おおジョンよすぐ行くぞよ! その土人を撲るがいい! その土人を蹴ってやるがいい! どこにいる? どこにいる? ジョンよどこにいるのだ※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」
 云い云い奥へ走って行く。
「お父様。私は殺されます! 土人は毒矢をつがえました。私の頸《くび》を括《くく》っています!」
 そういう声はだんだん幽かにだんだん奥へ遠ざかって行く。
「ジョンよジョンよ失望してはいけない! これもう一度お父様と云え! もう一度お父様と云ってくれ! すぐ行く! すぐ行く! すぐ行くぞよ!」
 ホーキン氏はあたかも狂人《きちがい》のように、藪を潜り木立ちを分け、無二無三に走ったが、忽然《こつぜん》何者かに足を掬われドッとばかりに前へ倒れた。
 ハッと驚いて飛び起きようとする。とたんにバラバラと木蔭からセリ・インデアンが二十人余り、獣のように飛び出して来たが、起きようともがくホーキン氏の上へ折り重なって組み附いた。二十人に一人では敵《かな》うべくもなく、見る間にホーキン氏は縛り上げられた。
「むう、さては計略だったのか」
 初めて気が附いたホーキン氏は、牙を噛むばかりに
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