が、五人が五人ながらたがいに顔を見合わせた。

    大盗になった理由

(厭な話だこと)
 とお蘭は思った。
(男も男だけれど、女の方が悪いわ……)
 この囲炉裡側《いろりばた》へは、毎夜のように客が集まって来て、無聊なままに世間話をした。それを聞くのを楽しいものにして、お蘭も、毎夜のようにここへ来て、お母親《かあ》さんが早く死去《なくな》り、お父親《とう》さん一人きりになっている、その大切なお父親《とう》さんの側に坐り込み、耳を澄ますのを習慣としていた。
 しかし十七歳の、それも一月後には嫁入ろうとする処女《きむすめ》にとっては、今の「女を憎む男の話」は嬉しいものではなかった。
(わたし行って寝ようかしら)
「ところが、そのお侍さんは気の毒にも、女のためばかりでなく、金のために、とうとう半生を誤りましてねえ」
 と、絹商人だという男が話し出したので、お蘭は、つい、また聞き耳を立てた。
「その後、そのお侍さんは、いよいよ零落し、下谷のひどい裏長屋に住むようになられたそうです。ところがその長屋の大屋さんですがちょっとした物持ちでしてな、因業《いんごう》だったので憎まれていましたが、大
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