仏国人民にして宗教のためその国に叛きあえて隣国のスペインに合同するあり。ゲルマンの公侯にしてその国皇に叛き救援をその同宗教国の人民に請うあり。宗教上の統一、むしろ宗教上の専制はほとんど国民と言える感情を破壊し、政府なるものはただその空名を擁して実権を有せざるに至る、この無政府的禍乱に反動して起こりたるものはかの宗教革命なり。宗教革命は教権の統一および専権を破りて信教自由を立つ、信教の自由すでに立ちて教権ようやく衰え、しかして国民的感情ははじめてふたたび人心に萌す。これを第一の変遷となす。日本近時の政論派にしてキリスト教と抱合し、あえて国民的感情を嘲る者は、まさに泰西百年前の政論を復習するに過ぎざるのみ。しかしてこの輩は自ら称して進歩と叫ぶ、吾輩はこれを呼びて泰西的復古論派といわん。
その政治的変遷
欧州人はすでに宗教上の圧制を破り外部に対して国民的精神を回復せり。しかれども当時の国民はなおその内部における統一を失い、権力の偏重によりて政治上の圧制を存す。ここにおいて人民はこの第二の圧制を破ることに向かいたり。八十九年における仏国大革命は実に国民的感情の第二変遷を来たせり。この革
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