たまたまもって虐主暴人のために恰好の口実となり、専横の弊は乱離の弊に代わりて起こりますます社会の悪を長ずるに至れり、これよりその後政論はいよいよ事実の激動して発達し、あるいは宗教の理に基づき、あるいは道義の道に基づき、またあるいは法律経済の原則に基づき、かの無限王権および貴族特権を攻撃してしかして自由平等の説を唱うるもの屈指するに遑《いとま》あらず。その後もっともいちじるしく個人自由を主張して極度に達し、この自由を国家主権の上に置かんと欲してその説を得ず、ついに「社会は人民各自の相互契約に出ず」と説きたるはかのいわゆるルーソーの『民約論』これなり。
『民約論』の主義は実に個人自由主義の極度に達したるものなり、しかして仏国の人民はかつてこれが実行を試みその功をなさざりき。しかりといえどもこの人民が八十九年に宣言したる自由平等博愛の旨義と主権在民の原則とは欧州大陸を振動し、その余波として数十年の後、千余里の外ついに東洋のわが国にまで及ぶに至る。今の板垣伯および星、大井、中江の諸氏が唱道せし自由論派はすなわちこれなり。第三期において自由論派の起これるは実に第二期の過激民権派と相連繋してなお新
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