かして改進派はまったくこれに反対の意見を有せり。三派の大主義における異同は実にかくのごとし、ただ帝政派は当時政府の弁護者となりかつ旧勤王論者と相合したるため、主義上と言うよりはむしろ情実上において他の二派に敵視せらたるが[#「敵視せらたるが」はママ]ごとし、しかして現政府の反対たる自由・改進の二派が時としては互いに反目激争のことありしは思うに他に理由あるべしといえども、一は国権論の上にはなはだしき異同を有するがためにあらざるか。
第四 自由論派
気質慣習の成るは一朝一夕のゆえにあらざるなり、本朝古代のありさまはこれを知ること詳ならず。漢土儒道の入り来たりし以来、わが国人はその感化を受けたること多からん、支那仏教の渡りし後もまた大いに風習を変更せられたるや知るべきなり。しかりといえどもこれみな東洋の文物のみ、東洋人種のやや似寄りたる国々にありてはその風俗習慣の根柢また相似たるものあり。儒道仏教の容易に移流したるは何ぞ恠《あや》しむに足らん。おおよそ東洋諸国の風習たるや主として服従忍辱を尚ぶ、その社会の構成は上下層々互いにその上を敬しその下を制しいわゆる上制下服に基づく、ゆ
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