に関心を持つとともに、こういう彼の家庭からして知らねばならないと考えたのである。
 間もなく週末の三日続きの休みを利用して、子供達がどこかの高原ヘキャンプ生活に出掛けるようになった時、私は山田を自分の部屋に呼んで来た。山田は今までこんな機会にはいつも参加出来なかったことを私は知っている。
「どうだね、君も行くかい」
 少年は頑《かたく》なに黙っていた。彼はこういう場合はこちらがどんなにやさしく持ちかけてもいつも疑り深くなるのだった。
「今度は君も行こうね」
「…………」
「どうしたんだね、君もお母さんを連れて来たらいいよ。父ちゃんでも構わない、どなたか父兄の方が来て承諾すればいいことになっているからね」
「…………」
「連れて来る気かい」
 山田は首を振った。
「じゃ行かないの?」
「…………」
「費用は先生が出してやる」
 彼は空々しい目で私を見上げた。
「そうしようね」
「…………」
「そんなら君のうちに先生が一緒に行って話してやろうか」
 彼は慌てたように又首を振った。
「でも三日もとまって来るんだから、父ちゃんや母ちゃんの許しを受けないわけにはゆかないだろう?」
「先生も山に行
前へ 次へ
全52ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
金 史良 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング