光の中に
金史良
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)身装《みなり》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)いかにも最|猛者《もさ》のように
×:伏せ字
(例)狂的に××してもいない
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#底本の注によれば…]
−−
一
私の語ろうとする山田春雄は実に不思議な子供であった。彼は他の子供たちの仲間にはいろうとはしないで、いつもその傍を臆病そうにうろつき廻っていた。始終いじめられているが、自分でも陰では女の子や小さな子供たちを邪魔してみる。又誰かが転んだりすれば待ち構えたようにやんやと騒ぎ立てた。彼は愛しようともしないし又愛されることもなかった。見るから薄髪の方で耳が大きく、目が心持ち白味がかって少々気味が悪い。そして彼はこの界隈のどの子供よりも、身装《みなり》がよごれていて、もう秋も深いというのにまだ灰色のぼろぼろになった霜降《しもふ》りをつけていた。そのためかも知れないが、彼のまなざしは一層陰鬱で懐疑的に見える。だが妙なことに彼は自分の居所を決して教えようとはし
次へ
全52ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
金 史良 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング