想像と装飾の美
それを持つ特殊の個性によって生かさるべし
岸田劉生
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)日本画を以《もっ》て
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)油|画具《えのぐ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)うねり[#「うねり」に傍点]
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日本画を以《もっ》て写実の道を歩こうとする事は根本から間違っている。日本画を以て写実を行うよりは駱駝《らくだ》の針の穴を通る方がやさしいといいたい位である。この意味で今日の新らしい日本画は殆《ほとん》ど皆駄目だ。物欲しそうな感じしか与えられない。
写実の道を歩みたいのなら諸君の前には至極便利な油|画具《えのぐ》がもう五、六十年も前から輸入されてある。一度日本画具を使って日本画師として立った以上、その画の具にあくまで仕えなくてはならないような気もするのだろうが、そういう貞節は馬鹿々々しい。美術の事はもっと上の事、「美」に対して本当に仕える事を知るなら、この事はおのずとわかって来るはずである。今時まだ日本画の画具でどうしても写実を完成してみせると力む人もあるが、そう
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