てほとんど全滅させ、自分もその場で戦いに倒れた英国海軍の軍神ネルソン卿《きょう》の銅像が、灰色の空に突き立って下界を見おろしているのである。そのネルソン卿の見おろしている下の広場は、自動車や人間の往来に目もくらむばかりであって、道一ツ横切るにも私たちのようないなか者はいつもひやひやしたものである。カフェーにはいると、地下室になっている。そこへ腰を掛けて茶を飲んでいると、天井の明かり取りのガラス板の上をおおぜいの人が靴《くつ》を踏み鳴らしながら通る。その騒々しさにはわれわれの神経もすり減らされるような気持ちであるが、さて戸を一つあけて寺院の内にはいると、たとえば浅草《あさくさ》の公園でパノラマ館にはいったよう、空気はたちまち一変して、外の騒々しさはすべて拭《ふ》いたように消されてしまって、寺院の内は靴音さえ慎まれるほどの静けさである。私はそういう空気の中で彼ワットの像を仰ぎ見ながら、低徊《ていかい》去るあたわず、静かにさまざまの感想にふけったものであるが、今またこの物語を草して機械のことに及ぶに当たり、ゆくりなくも当時を追懐して、ここに無用の閑話に貴重なる一日の紙面をふさぐに至りし次第で
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